ふしぎな安心感

今期1番の吹雪だ。ゴーゴーと山がうなるような音を立てている。木々たちが、しっかりと風を受け止めてくれている。
カシワの木などは、強い力が加わると幹の付け根から枝を落として身を守る。
枝にしがみついていた大小の雪球が、バキバキ音を立てながらたて続けに落ちて雪面をたたきつける。まさに落雷の音だ。
雪煙をあげ、所狭しと降り注ぐ様は圧巻で、恐怖感すらある。
大きなミズナラの木が、小僧こっちへ来いと言っているかのように、枝の両腕を広げて立っている。
思わずその下に逃げ込むと、不思議に安心感を覚えた。こんな日は生き物達も森に守られ、じっとしているに違いない。
一服しようと、ザックから温かいコーヒーとチョコレートを出すと、吹きすさぶ雪の中、エゾクロテンが木の陰からあきれたようにこちらをうかがっていた。

小林明弘

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