寅の刻

 昨日の大荒れの嵐は去ったが、まだ暴風雪警報が出ている地域がある。ここ内陸は風はなくなり、多くの雪がしんしんと降り続く。じっとしていると体に積もりみるみる雪だるまになってしまう。ヘッドランプの光に照らされた雪を見ていると、体が動いているような錯覚にとらわれ、酔ってしまいそうだ。
 ランプを消して雪明りに目を慣らしていると、雪の結晶がこすれあう音が聞こえる。木々たちが囁いているかのようだ。そんな寅の刻、雪宿りしている大きなミズナラの上から、何やら私を覗くものがいる。幽霊が出ても可笑しくない丑三つ時は、とっくに過ぎているが…。幹を伝わり近づいてきたものに向けライトを点けた――。

 

 

 

 

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