踊る手袋

   森に入ると、昨日降った雪の布団をかぶり、春がひと眠りしてしまったようだ。沢では、繭玉のようなネコヤナギが風に揺れながら踊っている。
 エゾクロテンが嬉しそうに何かを咥えて、右に左に走り回っている。獲物を捕らえたようだ。大きさからミヤマカケスか。スキップを踏みながら近づいてきた。咥えた獲物がリズムに乗り、人形劇のこびとを操るように上下に踊る。

   エゾクロテンが調子にのりぐるぐる振り回す。 アアッ・・・・ 行方不明の右手袋だ。返してもらおうと近づくと、得意げに振り回しながら逃げていく。所有権はエゾクロテンに移ったようだ。再び雪の影から現れて、見せびらかしながら手袋と遊んでいる。手袋に名前を縫い付けておけばよかった。

 

 

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