へっちゃらすいすい

暮れ始めた森の中。ラジオの周波数を合わせていると、明日は大雪、暴風、波浪、着氷警報と、やさしくささやく女性アナウンサー。雪女のささやく声に聞こえ、そら恐ろしくなった。
高い場所に3cm幅のロープを渡したような蔓の上を、エゾクロテンがバランスを崩すことなく渡っていく。いつ落ちてもおかしくない場所だ。
子供の頃に見たキグレサーカスを思い出す。エゾクロテンは、練習なしの本番だ。軽やかに、へっちゃらすいすいと渡っていった。

小林明弘

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